私たちが長年親しんできたハクチョウの飛来地・瓢湖(阿賀野市)がラムサール条約に登録されました。韓国で開かれた条約締約国会議で正式決定されました。
ラムサール条約について詳しく知る人はとても少ないと思います。
世界遺産登録あるいは、ワシントン条約などと混同することもあると思いますが、その目的は、多くの人に湿地の大切さを認識してもらい、水鳥の生息地としての湿地・湖沼を守り、豊かな生態系を維持することです。
瓢湖がラムサール条約に登録されたということは、水鳥が集まる瓢湖の環境を改善し、より良い活用方法を検討する必要があるということです。
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瓢湖のハクチョウは、「はくちょうおじさん」として有名な、故吉川重三郎さん親子が約60年前に、人間に決して近付かなかった野生の白鳥に、たった一人で餌付けを始めたことから始まりました。
毎冬、6000羽のハクチョウが飛来し、2万羽ほどのカモなどの渡り鳥もやってきます。日本中に白鳥飛来地はたくさんありますが、これほど小さな池にたくさんの白鳥が集まり、すぐ目の前で見ることができる場所は他にはありません。
この湖は、大自然の中ではなく、住宅街と水田の境にあります。ですから、私たちにとっては、「素晴らしい自然の中にいる野鳥たち」ではなく、「共に暮らし続けている仲間」のような存在なのです。
白鳥のいない季節は、住民の憩いの場所となり、桜が咲けば花見客が訪れ、夏には大きな花火が上がります。
週末の天気が良い日には、多くの白鳥見物の人々が訪れて、市営駐車場は満杯になります。
日本野鳥の会の人々は、人間の手からエサをもらう白鳥は「野鳥」ではないと思うでしょう。
一日3回のエサやりは、今もまだ必要かどうかの議論もあるようですが、ほとんどの白鳥は、昼間は湖を離れているので、残っている白鳥は、ケガ等の理由があるものも多いようです。
ラムサール条約に登録されたことで、その存在が広く知られ、多くの人が冬の瓢湖の白鳥を訪ねることは、大変嬉しいことです。
多くの注目が集まる今こそ、瓢湖の白鳥だけではなく、地域全体で取り組む姿を見て欲しいのです。
瓢湖から眺める五頭山は、私たちのシンボルであり、太陽が昇る山です。五頭山からの雪解け水は麓の畑を潤し、水田に注ぎます。この地域では、30年以上前から、全国に先駆けて農薬を減らす稲作りに取り組んで来ました。
その水田は、ハクチョウたちにとって絶好の餌場となります。
もし、この環境を守ることができなければ、新潟県の佐渡のトキが環境の変化で絶滅してしまったように、白鳥たちもこの地を訪れることはなくなるでしょう。
白鳥にとって本当に大切な自然環境とは、瓢湖の湖沼の中だけで成立しているのではないことを知ってください。周囲に暮らす人々の米作りにおいて、農薬などを減らし、人と野鳥が安心できる農業を拡大してゆくことなども大切です。
私たちは、60年もの間、自然体で白鳥と接してきました。昔ながらの暮らしを続けた結果が、たくさんの白鳥の飛来に結びついてきたようです。
新潟の長い冬を過ごしながら、雪原に集まる白鳥を見つけた時は、心がホッと和むものです。
これからも、
白鳥と共に暮らし続けることができる、
穏やかな田舎を大切にしたいと思います。
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