痛風・高尿酸血症の方の温泉療法
痛風の原因が解明され、尿酸利尿剤や尿酸抑制剤などが使用されるようになり、痛風の治療は昔と比べて、たいへん容易になりました。
それでも、体質・生活習慣改善など長期間継続しなければなりません。
痛風の症状改善の際に一番効果的な時期は、間欠期です。
急性期には炎症を抑えるために温泉入浴は控えなければなりません。
痛みの少ない間欠期には、食事療法・尿酸排泄剤、温泉入浴・飲泉がおすすめできます。
鳥取県の三朝温泉で飲泉しながら、温泉入浴をすると、尿中への尿酸の排泄が増加し、血液中の尿酸値が減ったという結果が出たそうです。
この効果の一つは、温泉水を飲んで尿量が増加したことが考えられます。同時に、入浴や温泉水の飲用によって温泉水中のいろいろな成分が体内に取り込まれ、腎血管を広げ、腎を流れる血液量を増やし、利尿効果がもたらされることもあげられます。
尿中に尿酸をより多く溶かして、体外へ排泄する力が大きくなったと考えられるからです。
つまり、放射能泉の入浴と飲泉で、腎の尿酸クリアランス(尿酸を尿中に排泄する割合)が増加して、尿酸代謝にいい影響を与えることがわかってきました。
◆ ラジウム温泉(放射能泉) 入浴のしかた
入浴のしかたには十分注意しなければなりません。 温泉地に行くと、早く効果を得ようと初日から何回も入浴し、翌日はとても体がだるくなる人がいます。
これは、温泉効果の初期症状ですが、決して無理せずに、はじめは1日2〜3回の入浴とし、数日経っても1日4回までにします。
角屋旅館の「ぬる湯」(39℃前後の入浴温度)で、20分間の入浴が効果的だといえます。
御風呂から出る時は、シャワーを浴びずに、乾いたタオルで肌の水分を十分に拭き取り、30分間くらい布団で横になって休養をとることも大切です。
◆ ラジウム温泉(放射能泉) 飲泉のしかた
温泉水を1日3回、食事の30分くらい前に飲みます。 1回分は、コップ1〜2杯ゆっくり飲むのが適当です。
ヨーロッパでは、痛風の療養には村杉温泉のような放射能泉や、重曹泉、石膏泉、重炭酸土類泉などの温泉水の飲用が有効で、「痛風の湯」として常用しています。
角屋旅館のラジウム温泉は、pH8.6のアルカリ性ですので、「痛風の温泉」として飲泉をおすすめします。
尿酸は酸性溶液ではとけにくく、結晶化して結石ができやすくなります。
そのため尿を酸性化させないようにする必要があります。アルカリ化食品が血液のpHに影響することはないのですが、これを食することで尿のpHが上昇して酸性化を防ぐので、結石の防止につながります。
アルカリ化食品は血清尿酸値とも直接の関係はありませんが、プリン体の少ない食材が多いので、多く摂取することで間接的によい影響を与えます。
◆ アルカリ性水を飲むことのすすめ
尿の量を多くしておくことは尿中の尿酸濃度を低下させて腎結石を防止す
るのに効果があります。一日に2リットル以上の尿が出るよう常に飲水を心がけるとよいでしょう。
◆ アルコールは控えましょう
アルコールをとりすぎると尿酸の排泄が悪くなり、尿酸値を上昇させます。またアルコール自体エネルギーが高く、食欲増進にもつながります。ビールは麦芽由来のプリン体を多く含んでいるので注意が必要です。アルコール類の摂取は原則禁止です。
医師から許可のあった場合でも一日200kcal程度、ビールなら500ml(中びん1本)、日本酒なら180ml(1合)、ウイスキーなら60ml(ダブル1杯)までとして、連日の飲酒はやめましょう。
痛風の発作のある時は体を温めないようにしなくてはならないので、入浴は控えましょう。
平常時でも43度以上の温泉は、尿酸値が高くなるため注意が必要です。ぬるめのお湯がお勧めです。
角屋旅館の 「ぬる湯 里の湯」 は、身体のためを考えた万能な温泉です。湯温は38〜39℃とぬるめで、ゆっくりとカラダを温めます。
カラダに刺激の少ない温泉に入浴することで、全身がリラックスし血流が改善され、利尿作用が高まり、尿酸値の低下につながるのです。
明治時代から高度成長前の昭和の頃までは、日本の温泉は健康にとって欠かせない 湯治場 = お湯で病を治す場所 でした。
年に数回、毎年決まった時期に一ヶ月ほど温泉場に逗留して、仕事の疲れを癒したものです。 村杉温泉もたいへん効果があっため、医者もすすめる温泉地でした。
近年は特にラジウム温泉が健康に良いことが認識され、医薬でも改善できない疾患にも効果があることがわかってきました。
特に、生活習慣病に対しては、都会の施設では実現不可能なほどの恵まれた環境が揃っているのが五頭温泉郷村杉温泉です。 温泉・自然環境・食事を効果的に組み合わせて、総合的に身体への効果が現れるようになるのです。
一泊だけでは、すぐに効果を実感することはできませんが、3泊4日の滞在を定期的に継続することで、身体の不調やゆがみを治し、健康的な暮らしができるようになるでしょう。
生活習慣病は、その習慣を改善することに時間が必要ですが、薬に頼った治療で副作用に悩まされるよりも、ココロとカラダをリラックスさせて、本来の身体のチカラを強くしましょう。
ドイツの文豪ゲーテ(1749-1832年)は、55歳のときに初めて腎結石を患いました。 厳格な食事養生と節酒による治療を試み、また、主治医の勧めでパート・ラウフシュタット(単純泉・pH6.2)の温泉で湯治を行いましたが、効果はありませんでした。
その後も毎月腎痛痛が続いたので、56歳の折、主治医たちの勧めで改めて隣国チェコのカールスバート(含炭酸重曹泉)療養を試み、小康を得ることができました。
「温泉水を飲みだしてから体調よろしく、ワインは全く飲まない。
朝5時に起きてどんな天候の折でも泉のところに行き、後、散歩したり山に登ったりしている」と家族への手紙に書いています。以後湯治を繰り返し、また、温泉水を自宅に取り寄せて飲用したとのことです。
1800年前後のカールスバート(カルロビ・バリー)では、柱廊に数力所温泉水が湧出し、飲泉治療が行われていました。湯治客の日課は決められていて、次のようなものです。
まず、朝5時に起床、どんな天候でも飲泉所に行き、医師の処方に従って温泉水を8時頃までゆっくりと飲みます。9時に朝食、11時まで散歩、1日おきに12時過ぎまで入浴します。午後は1時に昼食、食後2〜3時間気の向くままに時間を過ごし、4〜6時の間は劇を観たり、友人と談笑したりします。夕食後、9〜10時には就床するというものです。
ベートーベンも同じ時期に湯治に来ており、ここから交流が始まったそうです。当時のヨーロッパの温泉は貴族や芸術家が集まる社交的な湯治場だったということです。 |