痛風・高尿酸血症の方の運動療法
尿酸の産生を高めるような激しい運動はおすすめできませんが、有酸素運
動は血清尿酸値の上昇を起こさず、体脂肪の減少、軽症高血圧の改善、HDLコレステロールの上昇、耐糖能の改善など高尿酸血症に合併しやすい様々な病態を改善させます。
具体的には野山でのウォーキングや軽いジョギング、平地での自転車走行、体操などをおすすめします。
通常、正常な人の体内には尿酸が常に約1200mgあります。尿酸は体内で毎日作られ(一部は食事で摂取)、そして排泄されます。
この尿酸のバランスがくずれて、@産生・摂取分か異常に増加し、排泄分か異常に減少したとき、A産生・摂取分は正常だが、排泄分か異常に減少したとき、B排泄分は正常だが、産生・摂取分か異常に増加したときに、体内の尿酸が1200mg以上に増えてしまい、高尿酸血症になるわけです。
また、過度の運動は体内での尿酸の過剰産生につながり、ストレス、アルコールの多飲も尿酸を増加させ、腎臓からの排泄不全なども高尿酸血症の誘因になります。
高尿酸血症の状態が長く続くと、痛風を引き起こします。痛風の多くは、足の親指の付け根がはれて、動かすこともできないほどの激痛におそわれます。したがって、このような症状がある場合には運動をしてはいけません。
運動の種目とその運動強度によって、運動後の血清尿酸値は異な
る値を示します。尿酸値と運動の関係は、次のようになります。
@短時間の全身的な激しい運動のあとは、上昇が著しい。
A長時間の全身的な持久的な運動のあとは、上昇は比較的少ない。
B一部の筋を使用する筋力トレーニングでは、重量の大きな短時間の負荷では上昇が少なく、重量の小さな長時間の負荷では比較的上昇が大きい。
高尿酸血症の方に適した具体的な運動と、その方法は次のようになります。
◆ 運動の種類
全身的でリズミカルなリラックス運動。たとえば、ウォーキングや自転車運動、水泳などの有酸素運動。
◆ 運動強度
30〜40%強度の、ものたりなさを感じるくらいの強度。
◆ 運動時間 1回20〜40分
◆ 運動の回数 3泊4日で 2回
高尿酸血症の方の運動で特に注意することは、30〜40%の運動強度を守ることです。 30〜40%ではものたりない感じがするので、どうしても50〜60%くらいに強度を上げてしまいがちです。 しかし、強度が上がると血清尿酸値か運動前よりも高くなります。
運動後には、水分を十分に補給することが大切です。なぜなら、運動で汗をかくと血液水分が減少して尿量が少なくなり、腎臓からの尿酸の排泄がうまくいかなくなって、血中尿酸値が上昇してしまうからです。水分を十分に補給することで、尿量が確保でき、尿酸の排泄に好都合となります。
水分補給は、ただの水を飲むよりも、汗の成分と似たものが最適です。スポーツドリンクの中にはそうした成分が含まれており、体内の血清尿酸値の維持に効果をもたらします。
運動の後は、つい冷えたビールを飲みたくなりますが、高尿酸血症の方が運動後にビールを多飲すると尿酸値が上昇します。 その理由は、ビールの中のアルコールが乳酸(酸性物質)の生成を高め、血液を酸性に傾けるからです。
腎臓の働きは、血液が酸性化すると低下し、そのため尿酸の濾過を悪くして尿酸排泄量が減るのです。 |